日銀は31日の金融政策決定会合で、今の金融緩和策を維持すると同時に、四半期に一度の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表した。リポートでは18年度の成長率・物価上昇率見通しを小幅下方修正したうえで「経済・物価ともに下振れリスクのほうが大きい」という判断を示した。
政策委員の消費者物価上昇率の見通し(中央値)は、18年度は7月時点の1.1%から今回は0.9%に下方修正。19、20年度についてもそれぞれ0.1ポイント下方修正し、1.4%、1.5%とした。
日銀は7月の政策会合で、長期金利の変動幅の拡大を容認する微調整を実施した。黒田東彦総裁は31日の記者会見で、この措置が、市場機能の改善に役立っていると評価した。
日銀の物価安定目標の2%の達成は遠いものの、経済全体の強さや来年10月の消費税率引き上げの影響などをにらみながら、金融政策の正常化に向けた出口を探り、柔軟に修正策をとっていくことは妥当だ。
ただ、最近の経済情勢、特に海外要因が、日銀の政策運営を難しくしている。黒田総裁は記者会見で、経済の先行きリスクについて、米中貿易摩擦など保護主義や新興国市場の動向など海外要因が大きいとの認識を示した。
特に米中の貿易摩擦は、実体経済への影響はまだ限定的だが、すでに株式市場の波乱要因になっている。今後さらに摩擦が広がれば、世界の貿易・投資や、企業や消費者の心理にも悪影響を及ぼしかねないので注意が必要だ。
米国に続き欧州も金融緩和の縮小に動くなかで、新興国からの資金流出や、イタリアなど欧州の政府債務問題にも懸念が生じている。政府・日銀はこうした海外経済のリスクについて、各国当局と緊密に意見交換し、危機が広がらないよう協調する必要がある。
日銀は海外経済には不安があるが、国内経済は好調な雇用を背景に賃金が上昇する好循環が続いていると判断している。この基調が崩れなければ物価上昇の勢いも増し、金融政策の正常化への道筋も見えてくる。
超低金利や、日銀による上場投資信託(ETF)の買い入れなど異例の金融緩和が長引けば、金融機関の収益悪化や、市場のゆがみといった副作用も大きくなる。金融政策の手綱さばきは難しさを増している。
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