2018年5月2日水曜日

焦点:熱狂から冷めたビットコイン市場、大手参入で成熟するか

Tommy Wilkes and Vidya Ranganathan

 4月27日、乱高下を繰り返し、投資家をハラハラさせ通しだったビットコインだが、専門家によれば、成熟が進み、比較的退屈な安定期へと向かっている可能性がある。2017年12月撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)

[ロンドン/ニューヨーク/シンガポール 27日 ロイター] - 乱高下を繰り返し、投資家をハラハラさせ通しだったビットコイン市場だが、専門家によれば、成熟が進み、比較的退屈な安定期へと向かっている可能性がある。

世界各国で規制の動きが広がったことで、ビットコインの取引量は急激に縮小した。ウェブサイトのトップページからは仮想通貨の広告が消え、グーグル検索でも「ビットコイン」が検索上位ワードに入ることはなくなった。

ビットコインが成長を遂げた末にどのような存在を目指しているのか、投資家が理解しようとしている一方で、この代表的な仮想通貨は、自らの存在意義を見失いつつある。

「ビットコインには新しい物語が必要だ」。ニューヨークに本拠を置く投資リサーチ会社データトレックの創業者ニコラス・コーラスは、そう語る。「何らかの形で機関投資家の参加があれば、もう一段伸びる可能性はいくらでも考えられる」

ビットコインの価格は、昨年末の2万ドル近くから7割暴落した後、4月には25%上昇した。

ビットコインをめぐる状況は実際に変化しつつある。

2017年にビットコイン相場が急上昇する原動力となった小口個人投資家は、政府による取引制限措置によって排除され、代わりに仮想通貨ファンド、個人富裕層、既存の金融機関が取引の主役に躍り出た。

大口投資家が大口取引を行う可能性もあるが、そうした取引は、相対取引(OTC)やマッチング・プラットフォームのスクリーンの陰でその姿が見えにくくなってしまう場合が多い。

また大口投資家は、ビットコイン価格の急変動を追いかける可能性も低い。彼らはむしろ、実績には乏しいが有望なブロックチェーン技術の潜在的可能性に興味を引かれているからだ。

仮想通貨分析ウェブサイト、クリプトコンペアがまとめたデータによれば、主要仮想通貨取引所における1日当たりの平均取引高は、昨年12月に約170億ドル(約1兆8700億円)だったのに対し、3月には91億ドル、4月前半には74億ドルにまで減少している。

ビットフィネックス、ポロニエックス、コインベース、ビットスタンプを含む仮想通貨取引所で、1日当たり取引量が12月から3月にかけて半分以下に減少したことが、このデータで明らかになった。

クリプトコンペアによれば、仮想通貨の取引高は12月22日に過去最高となる300億ドルに達した。だが、4月8日の取引量は46億ドルにまで減少し、昨年10月以来最低水準を記録した。

<市場再編>

DRWホールディングス傘下のカンバーランドや、ゴールドマン・サックスが支援するサークルに加え、オレゴン・ストラテジーやクラーケンなどの名を冠した新たなOTC取引所や取引プラットフォームが登場したことで、大口機関投資家の参入を促し、ビットコイン相場の変動は抑えられ、流動性が高まるという考え方が勢いを増している。

キャメロンとタイラーのウィンクルボス兄弟が運営する仮想通貨取引所ジェミニが新たに導入したブロック取引では、注文が約定するまで他のトレーダーには分からないように大口取引を行うことができる。

ブロック取引最大手の1つ、カンバーランドは、35カ国以上に取引相手を持ち、約35種類の仮想通貨資産について売値と買値の双方(ツーウェイプライス)を提示している。

香港に本拠を置く仮想通貨取引所ゲートコインの創業者オーレリアン・メナント最高経営責任者(CEO)は、同取引所におけるリテール取引量が、昨年9月の1日当たり1億ドルから急激に減少したと語る。

だが機関投資家の市場参入により、隠れた相対取引がデータに表われない形で全体の取引量を押し上げている、と同CEOは指摘する。ゲートコインもOTCプラットフォームを運営している。

仮想通貨取引に関する計画を公表している機関投資家はほとんどいない。多くの資産運用担当者は、デジタル通貨が一時的な流行以上のものであるかどうか確信が持てないとしている。

だが、今週トムソン・ロイターが行った調査によれば、金融機関の5社に1社は、今後12カ月以内に暗号通貨取引を検討している。そのうち7割は、今後3─6カ月に取引を開始する予定だという。

一方、ビットコイン価格は、少なくとも記録上、安定に向かっているのかもしれない。

先物市場では、ビットコイン価格は9月まで8900ドルから9050ドルのレンジで、ほぼ横這いに推移するとみられている。

だがゲートコインのメナントCEOは、強気姿勢を崩さない。ビットコイン取引がギャンブルだと認めつつも、同CEOは今年末にビットコイン価格が10万ドルを超えると睨んでいる。

<潜在的な価値はあるのか>

シンガポールに本拠を置くフィンテック企業ダンカン・キャピタルの創業者ジョー・ダンカン氏は、各国政府が徐々に仮想通貨規制を緩和するにつれて、個人投資家も戻ってくると期待している。

「だが、ビットコインはこれからも市場優位性を幾分失うだろう」とダンカン氏は言う。

ビットコイン市場は、弱気相場と強気相場のあいだにある「煉獄」期間に入っている、とニューヨークのファンドストラット・グローバル・アドバイザーズのマネージングパートナーで共同創業者のトーマス・リー氏は語る。この状態が少なくとも9月まで続く可能性があると同氏は予想する。

1つの問題は、大口機関投資家の多くが、ビットコインの基礎であるブロックチェーン技術が金融セクターにどのような革命をもたらすかについて興味を抱いているものの、ビットコインそのものが通貨として広く受容されておらず、本質的な価値を持っていないという点だ。

このことと、ビットコインの高いボラティリティーが、投資家による価格予想を非常に困難にしている。

一部のアナリストは、デジタル世界のなかで、他の仮想通貨が商取引に用いられる一方で、ビットコインは「金地金」のように資産としてのプレミアムを保つのではないかと考えている。

他方、ビットコインも単に新たな種類の資産でしかないと考えるアナリストもいる。

「仮想通貨を保有する理由の1つは、それがリスクヘッジの手段として有効だからだ」。ファンドストラットでデータアナリストを務めるサム・ドクター氏はそう語る。ファンドストラットの創業者はビットコインに関する強気の姿勢で有名であり、今年もビットコイン価格が大幅に上がると予言している。

「この理由が間違いだと証明されることが起きない限り、他の資産クラスが下落しているときに、仮想通貨を売ろうとはしないだろう」とドクター氏は語った。

(翻訳:エァクレーレン)

 4月27日、乱高下を繰り返し、投資家をハラハラさせ通しだったビットコインだが、専門家によれば、成熟が進み、比較的退屈な安定期へと向かっている可能性がある。写真は2017年11月、ラトビアにて(2018年 ロイター/Ints Kalnins)

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