日産自動車の検査不正は、国土交通省の検査で問題が発覚して西川広人社長が謝罪し、適正化を進める方針を表明した後も、無資格者による検査が続いていた。経営陣が現場の状況を把握できず、指示も徹底されなかった。これが世界市場で圧倒的な存在感を誇るグローバル企業のやることか。あきれるしかない。国内6工場からの出荷停止は当然だ。
EV市場投入は後に
日産は電気自動車(EV)の市場投入を加速する戦略を進めているが、事態がここまでくれば、EVは後回しでよい。まずは全社を挙げて、法令に適合する検査体制を構築しなければなるまい。現場の工場を見直すだけでは足りない。無資格者が関与する余地をなくすためには、資格を有する検査員の増員、本社と工場間の指示経路の検証とそれを踏まえた修正、さらに必要に応じて、人事や研修制度も含む抜本的な改革が必要だ。拙速な出荷再開は許されない。
事態を甘く見てきたのではないか。検査自体が適正に行われれば、誰が検査しようと保安基準は満たされ、性能には問題はないとの認識が経営陣、現場に染みついているとしたら、ものづくりの担い手としては失格と言わざるを得ない。
出荷直前の検査は、車が道路に出る前に行う安全確保の最終関門だ。完成車を迅速、大量に市場に供給するため、本来は国が1台ずつ検査する手続きを省略し、資格を持つ検査員が担当している。「性善説」に基づきメーカーが国のチェックを代行する制度だ。
各工程での個別検査を済ませていることを理由に、最終検査は多少、手をぬいてもいいと認識しているとしたら、見当違いもいいところだ。
改革行い信用回復を
かつて倒産の危機にあった日産を救ったのは、フランスのルノーから乗り込んできたカルロス・ゴーン会長だ。立て直しに臨み、その決意を内外に表明した「コミットメント」(必達目標)という言葉からは不退転の気概が伝わってきた。ゴーン氏は言葉通り、日産を再生し、世界市場でも仰ぎ見られるような企業に育て上げた。
売れる車の開発、市場投入を他社に先んじることを最優先し、そこに集中的に経営資源をつぎ込んできた。検査をおざなりにし、その重大性に経営陣、現場とも鈍感であり続けたのは、その副作用ではないのか。車に求める価値観で安全以上のものがあるのか。人手不足は理由にならない。必要な安全確保策を尽くすのは当然で、人手が足りないのなら、その分、生産を縮小するしかない。
最も重要な安全対策で消費者を欺いた行為は、メーカーの存在理由さえ危うくする。西川社長の検査を是正したとの説明は偽りだった。信用を回復したいのなら、最高実力者のゴーン氏がコミットメントを内外に宣言し、安全対策の最優先を誓うべきだ。
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