日銀の黒田東彦総裁は9日、2期目の新体制をスタートさせた。2013年からの1期目は大規模な金融緩和で景気を支えたが、前年比2%の上昇とする物価目標は達成できなかった。2期目の課題はデフレ脱却を確かにし、金融緩和の縮小に動くこと。だが足元の物価は弱く、円高は企業収益に影を落とす。日銀は緩和の持続か強化に追い込まれる可能性もある。
黒田総裁は9日夜、総裁に再任されてから初めての記者会見に臨んだ。前年比2%上昇の物価目標の達成に向け「(金融政策の)総仕上げとして全力を尽くす」と強調。金融緩和の縮小に向かう出口戦略については、「検討する局面に至っていない」と語った。
黒田総裁は2013年に巨額の国債を買い入れることによる異次元緩和を始めた。16年2月には銀行が日銀に持つ預金の一部にマイナス0.1%の金利を適用する「マイナス金利政策」を導入。同9月には長期金利をゼロ%程度に誘導する施策を採用した。
5年間にわたり大規模な金融緩和を続けたが、2月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は前年比1.0%にとどまり、2%物価目標にはなお遠い。物価目標の達成時期は6回にわたって先送りしてきた。
2期目の金融政策はどうなるのか。市場関係者が有力と考えるのが、今の金融政策が長い間据え置かれるシナリオだ。
日銀は1月に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)で、2%の物価目標を19年度ごろに達成できるとしている。だが日本経済研究センターがまとめた民間エコノミスト41人の予測は19年度に1.4%。日銀とは開きがある。
民間が弱めの物価を見込むのは、戦後2番目に長い景気回復の勢いが鈍るとの見方があるためだ。消費税の引き上げが19年に予定通りあれば、それ以降の成長率に下押し圧力がかかる。20年の東京五輪後は景気の先行きが不透明で、今の金融緩和を長く続ける可能性は否めない。
世界経済が堅調に推移し、日本でも景気回復とともに物価上昇率が2%に近づけば、日銀は金融正常化に向けた「出口」を探る。20年続くデフレから脱却する理想的なシナリオだ。
国内の需要と供給の関係は10年ぶりの高い水準で「需要超過」にあり、物価には押し上げの力がかかっている。日銀幹部は「出口に関して何も考えていないわけではない。今後の経済・物価情勢によって具体的な手段を考える」と語る。
野村証券の松沢中氏は「日銀はまず国債の買い入れペースを減らし、次に利上げやバランスシート縮小の順番で検討する」と見通す。新しく積みます国債の額をゼロに近づけ、次に長期金利の水準調整やマイナス金利の引き上げに動くとの見立てだ。日銀は06年夏のゼロ金利解除後に利上げペースを巡って市場と衝突した苦い経緯がある。出口を検討する際は市場との対話も重要になる。
最悪のシナリオは一段の金融緩和を迫られることだ。3月の金融政策決定会合では「物価目標の達成が遅れるリスクが高まれば追加緩和が必要になる」との意見が一部で出た。足元の米中貿易摩擦が長引くと、円高が物価上昇の力を弱めかねない。ただマイナス金利の深掘りや国債の買い入れの増額は難しく、追加緩和の手段は多くない。
新体制の副総裁は日銀企画畑出身の雨宮正佳氏と、金融緩和に前向きなリフレ派の若田部昌澄氏。若田部氏が決定会合でどんな主張をするかはわからず、新メンバーが金融正常化の議論に影響を及ぼす可能性もある。
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