東海道・山陽新幹線ののぞみの台車に亀裂が入ったトラブルで、亀裂の長さが縦約14センチに達し、あと3センチで鋼材が破断する恐れがあったことが19日、分かった。記者会見したJR西日本の吉江則彦副社長は「安全性への信頼を裏切った」と謝罪し、全台車で微細な傷の有無を確認する臨時検査を実施するとした。新幹線では過去に例のない事態で、専門家からは「脱線の可能性もあった」との指摘が上がっている。
吉江副社長は会見で「お客様をはじめ関係者に深くおわびする」と頭を下げ、「過去の検査でも同様の事例はほとんどなく、想定していなかった」と説明。2005年のJR福知山線脱線事故にも触れ「事故後の対応が生かされなかったことを、重大に受け止める」と述べた。
台車は川崎重工業が07年に製造。鋼材製で車軸を固定し、2台で新幹線の車体を支える。トラブルがあった台車を博多総合車両所(福岡県那珂川町)で調べた結果、台車枠(長さ約3.3メートル、幅約2.1メートル)の1カ所に両側面約14センチ、底面約16センチのコの字形の亀裂が見つかった。JR西によると、亀裂は底部から上部に向かって進み、あと3センチで最上部に達して鋼材が折れる恐れがあった。
JR西は亀裂の原因について「現時点では不明」としたが、運輸安全委員会は重大インシデントと認定。中橋和博委員長は19日、「突発的に亀裂が生じたとは考えにくい。台車に細かい傷があり、何回か走行するうちに広がったのではないか」との見方を示した。
JR西は再発防止策として、全ての台車について今回亀裂が入った部分を重点的に検査。台車部分などにセンサーを設置し自動で異常を検知するシステムの導入も検討する。トラブル当日の対応の遅れを踏まえ「異常の有無を確認できない場合は運行を取りやめるよう社員教育を徹底する」(担当者)としている。
トラブルは11日、博多発東京行きののぞみ34号で発生した。小倉駅(北九州市)を発車した同日午後1時50分ごろに客室乗務員が異臭に気づき車掌に報告したが原因は分からず、岡山駅(岡山市)から車両保守担当社員が乗車した。
この社員が異音を確認し、停車駅での点検を提案したが、新幹線総合指令所と協議した結果「走行に支障はない」と判断し、名古屋駅(名古屋市)で運行を取りやめるまで約3時間走行した。
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