佐川急便の親会社、SGホールディングス(HD)が13日、東証1部に上場した。日本の政界を揺さぶった東京佐川急便事件から四半世紀を経て、ようやく節目の上場にこぎつけた佐川。経営の透明性向上や法令順守の徹底といったなお残る課題を乗り越え、新しい姿に変われるか。
13日朝、東京証券取引所の上場セレモニー。SGHD会長の栗和田栄一氏はほがらかな表情で鐘を突いた。創業からちょうど60年、危機を乗り越えての悲願の上場だ。記者会見では町田公志社長が「インフラを支える公器として支持されたい」と抱負を語った。
故佐川清氏が京都で「飛脚業」を始めたのが1957年。トラック輸送に手を広げて急成長したが、90年代初頭に暴力団系企業への融資で5千億円超が回収不能になる「東京佐川急便事件」が発生。自民党の金丸信元副総裁へのヤミ献金も発覚し、グループは消滅しかかった。
事件直後に旧佐川急便の社長になり、再建を主導したのが栗和田氏だ。栗和田氏は佐川氏の実子だが、父と別れた母方の姓を名乗って育った。高校卒業後は国鉄で働き、父の会社に入った。社長就任後、各地に散らばっていた法人を統合し、06年にSGHDを中心とする持ち株会社制に移行。07年には会社の象徴だった「飛脚」マークも廃止した。背景には特殊な会社と見られがちな佐川を「普通の会社」にしたいとの思いがあった。
現金商売の佐川に「特段大きな資金需要はない」(町田氏)。上場でほしかったのは上場企業の「看板」だ。物流業界は深刻な人手不足でサービス維持すら難しくなっている。ワタミ創業者の渡辺美樹氏が運転手として開業資金をためたように、かつての佐川は仕事はきつくても頑張れば月100万円近い収入が得られた。今は昔のようには稼げない。上場には社会的な信用と成長性を示し、人材確保や引き留めにつなげる狙いもある。
13日終値ベースの時価総額は6102億円。佐川は16年に資本提携した日立物流と最短で19年4月の経営統合を視野に入れている。実現すれば時価総額は単純合算で約9300億円となり、陸運首位のヤマトHDにほぼ肩を並べる。ただ、やんちゃなイメージの佐川と日立物流では「企業文化が違いすぎる」(物流関係者)との指摘もある。
実際、最近もいくつか不祥事が起きた。16年に荷物を投げ飛ばす運転手の映像が流出。駐車違反の取り締まりを受けた運転手が知人に身代わり出頭を依頼していたことも発覚した。17年には運転手の残業代の一部未払いも明らかになった。
法令順守が徹底できなければ統合にも影響しかねない。町田氏は「市場の厳しい目にさらされることでプライベートカンパニーの文化から卒業したい」と強調する。普通の会社への脱皮をどう仕上げるか。上場の喜びに浸っている余裕はない。
(村松洋兵、大酒丈典)
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