代表的な仮想通貨であるビットコインの取引が急減している。売買や送金など1日あたりの取引額はピークだった2017年末の4分の1に減少した。金融庁による仮想通貨交換業者への行政処分が逆風になっているうえ、世界規模で規制が強まるとの警戒も高まっている。主な投資主体だった個人の関心が冷め、一部は外国為替証拠金(FX)取引に移っている。
情報サイトのブロックチェーンインフォによると、ビットコインの1日あたりの取引額は昨年12月12日の40億ドル(約4500億円)から2月中旬には10億ドルに減少した。3月に入っても10億~13億ドルで推移する。取引件数も約20万件と昨年末のピークの半分以下だ。
価格も下落傾向だ。ビットコイン価格は昨年後半に騰勢を強め、12月17日に1万9783ドルの最高値をつけた。だが18年に入り各国で規制を強める動きが広がり、売りが優勢になった。仮想通貨交換業者コインチェック(東京・渋谷)による仮想通貨「NEM(ネム)」の流出事件も下落に拍車をかけ2月上旬に一時6000ドルを割った。
金融庁は8日、体制が不備だった交換業者7社に行政処分を出した。業界への信頼が低下し「新規に口座を開く人が減っている」(交換業者幹部)という。19~20日にアルゼンチンで開催する20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議では、仮想通貨の国際規制が主要な議題になる見通しだ。世界的な規制強化への警戒も強まっている。
昨年11月に仮想通貨を初めて買った神奈川県在住の会社員、大野友梨さん(26)は現在は売買を手控えている。荒い値動きに嫌気が差し「投資信託でリスクを抑えながら投資したい」と話す。東京都品川区の主婦(29)は「1月以降の下落で含み損を抱え、しばらくは動けない」という。
個人の一角はFXに資金を移している。1ドル=105円台まで円高が進むなど為替相場の値動きが大きくなり、売買機会が増えているためだ。仮想通貨交換業も手掛けるFXトレード・フィナンシャルの閏間亮取締役は「仮想通貨の売買が落ち込む一方でFXは盛り上がっている」という。
市場では「当面は積極的に買う材料が乏しい」(フィスコデジタルアセットグループの田代昌之氏)との声も漏れる。取引が再び盛り上がるためには、利用者保護の仕組みなど取引インフラの整備が必要になりそうだ。
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