戦後2番目に長い高度経済成長期の「いざなぎ景気」を抜いた日本経済の2018年が始まった。ただ、足元では企業の人手不足や少子高齢化の進展など、将来への不安は拭えない。そこで経済3団体トップに成長に向けての展望などについて聞いた。
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--昨年を振り返ると
「安倍晋三政権が発足し、アベノミクスが始動し丸5年だ。この間に、株価も上昇し、為替も(1ドル=)80円台の円高から110円台半ばの円安に転換した。7四半期連続で国内総生産(GDP)もプラス成長になっている。地方や中小企業では景気回復を実感できないという声もあるし、消費もなかなか上がってこないのは事実だが、一昨年の後半から潮目が変わった。消費者物価指数が10カ月連続で上昇しており、昨年後半には、それまで10年以上マイナスだった(物価変動の程度を表す指数の)GDPデフレーターがプラスに転換した。需要が供給を上回る事態となり、それに伴って設備投資が製造業、非製造業、大企業、中小企業ともに増加している。景気回復に向けて力強さが出てきている」
--今年については
「昨年からの勢いを加速していきたい。日経平均株価は2万5000円まで上昇するとの予測も出ている。特に米国の経済は拡大基調が続いているし、今度の減税措置も景気を刺激する。米国が世界経済をリードしていくのは間違いないし、中国や欧州も堅調。世界経済の拡大基調は、日本の景気回復を大きく後押しする。今はデフレではない状況にはあるが、消費者物価指数が上昇を続けていく中で、(政府による)『デフレ脱却宣言』ができるだろう。そういう年にしていきたい」
--消費回復やデフレ脱却に必要なことは
「成長戦略を着実に進めていくことがまず重要だ。人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)、ロボット化などの新技術を高度に組み合わせ、社会の変革を図る『ソサエティー5.0』を進めていくことや、サービス産業の活性化や生産性の向上などに取り組んで潜在需要を拡大させる。さらに、今年3月の春季労使交渉で、しっかりとした形で賃上げができることが相まって、経済の活力が増すことが重要だ。過去4年間、2~2.3%の賃上げを実行してきた。この勢いは維持させたいし、安倍首相からあった3%の賃上げの期待は、社会的な要請と受け止め、それを意識しながら、各社の収益の状況に見合った前向きな対応を求めていきたいと考えている」
--安倍政権に対する評価と今後期待することは
「全体としてがんばっている。特に国際政治の舞台で、北朝鮮の脅威が顕在化し、地政学リスクが高まっていることや、反グローバリズム、ナショナリズムが強まる中で、現政権は世界政治の中で存在感を発揮し、それは高く評価できる。経済政策についても、打つべき手は打っている。日本経済の最大の課題である少子高齢化の問題でも人づくり革命などで政策パッケージを実施しており、われわれ経済界と同じ方向で進めてもらっている。期待することはこれらの政策を確実に実行することだ。特に社会保障改革では、もっと踏み込んでほしいという希望もある。財政健全化についても、新たな工程表を作成して、きちんと実行に移してほしい」
--世界経済を考えると、米トランプ政権の動向が注目されるが
「日本の経済界としてはプラス面とマイナス面はある。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱などは残念なことだが、トランプ政権は、米国経済を強める政策をとっており、経済面ではプラスに働き、日本にとっても良い方向に働く面もある」
--自身の経団連会長としての任期は半年を切った
「経団連の存在意義を高めることに務めてきた。日本の経済・社会の中で国民、社会、政治に対する影響力は高まってきた。デフレ脱却、経済再生の正念場の中で、政治と経済の連携は重要で、私自身が経済界の代表として、政府に直接提言できるようにもなってきた。そういった体制を受け継ぐ後継者の指名が重要だ。また、昨年後半から品質不正やゼネコン(談合疑惑)の問題が出ている。企業が信頼を回復させる取り組みを急ぐ必要がある」
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【プロフィル】榊原定征
さかきばら・さだゆき 名大院修了。1967年東洋レーヨン(現東レ)。専務、副社長を経て2002年社長、10年6月会長を経て、17年6月から相談役。経団連は14年6月に会長就任。74歳。愛知県出身。
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