2018年8月10日金曜日

トルコ通貨急落、市場揺らす ユーロ・日本株にも波及 リラ一時1割超下落 経済対策発表へ

 トルコの通貨リラの急落が金融市場を揺さぶっている。リラは10日、対米ドルで一時前日比で1割下落して最安値を更新し、年初来の下げ率は4割に達した。米国人拘束問題で対米関係が急速に悪化。金融政策への介入など強権的な政権運営も投資家の信頼を損ない、マネーの流出が止まらない。欧州の通貨ユーロや日本株にもリスク回避の売りは波及しつつあり、市場は地域大国トルコの通貨・経済危機への警戒感を高めている。

 10日の外国為替市場でリラは一時1ドル=6リラを突破し、過去最安値を更新。前日からの下げ幅は一時10%を超えた。トルコ向け債権の多い欧州銀行の損失懸念から売りはユーロにも波及。一時1ユーロ=126円台後半と約2カ月ぶりの円高水準を付けた。リスク回避の流れで日経平均株価の下げ幅も300円を超えた。

 足元のリラ急落はトルコ在住の米国人牧師拘束問題の影響が大きい。トルコ側がこの牧師が2016年のクーデター未遂に関与したとして拘束。米国側が経済制裁で対抗する異例の事態になっている。両国の高官協議が8日、不調に終わり、リラ売りが加速している。

 金融引き締めを嫌うエルドアン大統領が中央銀行に圧力をかけていることも通貨の信認を損なっている。7月にトルコ中銀が事前の市場予想に反して政策金利を据え置いてからリラ売りに拍車がかかっている。

 経済政策を統括するアルバイラク財務相は10日、イスタンブールで今後3年程度を対象とする中期経済計画の大枠を発表する。9月公表予定だったが、通貨急落で急きょ前倒しを決めた。すでに財務省は9日、19年の国内総生産(GDP)成長率を従来目標の5.5%から3~4%に下方修正。直近で約16%のインフレ率の1桁台への引き下げ方針も示した。経常赤字も圧縮を見込む。

 高成長より通貨と物価の安定を優先する姿勢を示す狙いだが、具体策をどこまで示せるかは不透明だ。そもそも大統領の娘婿で、40歳の若さで最重要ポストに登用されたアルバイラク氏の存在自体が市場の懸念材料となっている面もある。

 リラの年初来下落率は、国際通貨基金(IMF)に支援を仰いだ南米アルゼンチンの通貨ペソの下げに匹敵しており、通貨危機の様相が強まっている。ただ、実体経済や財政が危機的な状況にあるわけではない。

 トルコは20カ国・地域(G20)の一角を成す地域の経済大国で、人口約8千万人と国内市場に厚みがあり、若年層の拡大で内需は旺盛だ。欧州と中東をつなぐ要衝に位置し、欧州や新興国向けの自動車など産業集積もあり、経済の足腰は弱くない。

 問題は、エルドアン政権が米国との外交問題の解決や中銀の独立性を巡る疑念の払拭などで市場の信認を取り戻し、早期に通貨安を沈静化できるかにかかっている。

 トルコの官民が向こう1年間に短期債務の返済や経常赤字の穴埋めで必要とする外貨は2000億ドル(約22兆円)を超える。対ドル、対ユーロでリラ安が進むと、外貨建て債務の返済負担に耐えられない企業が破綻し、それが金融システム不安につながりかねない。公式の銀行の不良債権比率は3%だが、すでに経済の減速などで「実際にはその2倍以上に上昇している」(あるエコノミスト)との見方もある。

 貿易や金融の結びつきの深い欧州への波及リスクもある。トルコにはスペインのBBVA、イタリアのウニクレディト、フランスのBNPパリバが進出している。英フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版は10日、これら欧州大手銀の「資産状況を懸念している」という欧州中央銀行関係者の発言を報じた。

 エルドアン氏は10日、黒海地方での演説で、「組織的活動に耳を貸すな。相手にドルがあるなら、我々には国民と神がある」と述べた。国内向けに市場の圧力に屈しない姿勢を強調した形だが、強権路線に固執すればリラの信認がさらに低下しかねない。通貨急落が実体経済の危機に発展するリスクは高まっている。

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